午後から『御神酒徳利』の神奈川より先を文字起こし。夕方に最後まで辿り着く。この噺は、きちんと演れたらどんなに気持ちいいだろう、と思った。いったん家に帰って夕飯を食べて、また外に出かける。
夜道を歩きながらラジオのナイター中継を聴く。セリーグのプレイオフは、地元・横浜DeNAが広島を破って19年ぶりに日本シリーズに出場することになった。僕は熱心な野球ファンではないけれど、ここ数年、球団ががんばって、市民に愛されるチームになってきたことは、横浜の街を歩いているだけで伝わってきた。いろんな人の努力が報われたことは想像に難くない。熱心なファンには到底及ばないが、じわっと嬉しくなった。
前回のベイスターズ優勝は1998年。僕が小学校5年生の年。長銀や拓銀など金融機関の倒産が相次ぎ、暗いニュースの多い一年だったことを覚えている。小渕総理が両手にカブを持って「株あがれー」とやっていた頃だ。そんな世相の中、ベイスターズのマシンガン打線は子供心にとても爽快で、守護神・佐々木主浩は心強かった。大洋ホエールズ以来、37年ぶりの優勝だった。(この頃からすでにラジオが好きだった。野球が好きというよりナイターの実況が好きで、もっぱらラジオを聞いていた。)
優勝後のビールかけで、ある選手が「また37年後に会いましょう!」と洒落で言っていたのをよく覚えている。その次の年から再び、長い長い低迷が始まった。
あの「また37年後!」は言霊になったろう。次にベイスターズが優勝するのはまた37年後であろう。そう思っていたので、このタイミングで日本シリーズに進めるとは思わなかった。
広島カープは、気の毒だ。
放送席の解説者いわく「プレイオフが始まると、首位のチームは2位・3位のいずれかが勝ち上がってくるまで実戦から遠ざかっているので、勘が鈍ってしまう」。これは全くその通りだと思った。落語家も、なるべく高座は毎日上がっていないと間が狂う。たとえミクロな誤差であっても、まったく酷いことになる。
つまり、落語は魔法である。
毎日、呪文を唱えなければ魔力がなくなっちゃう。
試合終了まで聴き終えると、また噺に戻る。歩きながら言葉を入れ始めて、集中力がきれてくると、気分転換に言い立てを覚える。しばらくしたらまた元へ戻る。1時半くらいまでその繰り返し。